コロナ禍になり、2年ほど働き方が大きく変わり、在宅でお仕事を始められた方も多いのではないでしょうか。
「グラフィックデザイナーとして生計を立てたい」「グラフィックソフトの使い方は本やネットで調べたらわかるが、一連の仕事の流れが調べてもわからない」といった声をよく耳にするようになりました。
実際グラフィックデザイナーという職種は、とても忙しい人が多く、ブログを書いている人自体が少ないです。
そこで今回はグラフィックデザイナーの仕事の流れを細かく紹介していきます。
最初に定義しておきますが、WEBデザイン・LP(ランディングページ)デザインはここで紹介するものとは少し工程が変わります。
ここでは
- ロゴ
- DTPデザイン(名刺・チラシ・ポスター・パンフレット等)
- WEBデザイン
- バナー
これらのデザインでのワークフローを紹介していきます。
記事の目次
ヒアリング
依頼を受けて、まずどんなデザインを作るのか、クライアントからヒアリングすることから始まります。ヒアリングである程度内容をすり合わせておくことは、認識の相違がないかを確認することができるので、非常に重要です。
この段階でお互いの認識に相違があると、あとの工程で大きな修正が発生します。しっかりヒアリングしましょう。
まだ確定していない案件については、簡単にヒアリングしてざっくりとした見積もり額を提示することもあります。(ヒアリングに時間をかけたものの、見積もり金額がクライアントが考えていた額と大きく違う場合は、受注に至らないこともあります。制作物の基準の金額はざっくりでも良いので設定しておきましょう)
ヒアリングの段階で、スケジュールも決めておきましょう。印刷物の場合は「いつまでに必要なのか」によって制作期間がタイトになったりします。印刷にかかる時間も見積もっておきましょう。
スケジュールをきっちり決めておかないとダラダラと修正が続き、工数が増えます。
ヒアリング内容
グラフィックデザイン共通
- 目的(ゴール)・・・何を目的(ゴール)に制作物を作りたいのか
- 使用用途・・・どういったことに使うデザインなのか
- ターゲット層・・・どういった年齢層の方に響くデザインにするのか
- サイズ・・・希望のサイズはあるのか(バナーの場合は掲載予定のサイトでのサイズ)
- デザインテイスト・・・希望のデザインの雰囲気。特にない場合は好きなブランドやアニメ・イラストなどを聞く
- 素材の有無・・・写真素材はもらえるのか、こちらで用意するのか(イラストをデザイナーが描く場合は追加費用が発生する旨を伝える)
- 予算・・・ざっくりとした予算を聞いておけば、受注しやすくなる、予算がない場合は1案だけの提案にしたり、修正回数に制限を設ける
紙媒体の場合
上記の内容のほかに
- 紙質・・・どんな紙質が希望か(ツルツルがいい、発色が良い、高級感を出したい等)
- 納期・・・いつまでに手元に欲しいのか
- 部数・・・紙媒体の場合は多く印刷すると1枚あたりの単価が安くなるので、100部・200部の場合の印刷代を提示してあげるとクライアントも選びやすい
- 形・・・A判・B判・片面or両面など
- 縦or横・・・制作物の希望の向き
- 加工の有無・・・角を丸くする、折り加工など
見積書作成
ヒアリング内容を元に見積書を作成する。テンプレートなど調べると無料で配布しているサイトは多々ありますが、わたしはmisoca(ミソカ)有料版を使っています。
見積書〜納品書・請求書など一貫して発行しやすく、入金があったかなども管理がしやすい。
消費税設定もできるので、税込・税抜、切り捨てなども変更可能。
個人の方がクライアントの場合は、見積書を発行せず、メッセージ上で「●●円かかります」と伝えることが多いです。
企業の方だと見積書や相見積書を発行しないと稟議が通らないこともあるので、クライアントに必要かどうか都度確認しましょう。
情報収集
ヒアリング内容を元に、使用目的・ターゲット・イメージ色・マーケット(市場)・企業イメージなどの情報を収集して分析する必要があります。
これはマーケターが担当する場合もありますが、個人の方がクライアントだとデザイナーが担当します。ある程度把握しておくことが大事です。
バナーデザインの場合は、似たような内容のバナーデザインを参考にするのも良いでしょう。
例)不動産の完成見学会キャンペーンバナー
使用目的 | キャンペーンを開催するので、その告知で使う |
ターゲット | マイホーム購入を考えている家族(20〜30代) |
イメージ色 | 企業カラー |
マーケット(市場) | Instagram広告でも使いたいので、読みやすく文字を大きくする |
企業イメージ | パッとみて完成見学会とわかるように・高級感を出す |
ラフ制作
情報収集が完了すると、アイデアをどんどん出してコンセプトに沿ったレイアウト・表現を明確にしていきます。
この段階では細部までこだわる必要はなく、コンセプトを自分の頭の中で整理する工程として、自由な発想でアイデアを出していきましょう。
ここで作ったラフを一度クライアントに共有しておくと、認識を合わせることができ、あとで大幅なデザイン変更が少なくなります。
ロゴ制作の場合は、ラフを描く工程は非常に大事です。いきなり制作ソフトで作らず、手書きで自由に描いてアイデアを出していきましょう!
デザイン制作
デザインソフトを使って制作
ラフ案を元に、デザインをillustrator・Photoshopで作っていきます。ロゴ画像や使用写真が仮の場合は「ダミー」と書いておくとわかりやすいです。
イラストや写真は、支給がなければ素材サイトで探しましょう。
無料素材サイトはたくさんありますが、必ず「利用規約」を読んで「商用利用可能」なものを使いましょう。
完成したデザインの提出方法
完成したら、制作したデザインがよりクライアントに伝わりやすいように工夫しましょう。送る際にデザイン意図を書いておくと、デザインに対して説得力が増します。
ロゴはコンセプトを記載
チラシはトンボをカットして仕上がりサイズにする
モックアップを使って仕上がりイメージを伝える
また「モックアップ」という使用イメージを制作してプレゼンすると、よりイメージが湧きやすくなり、デザインを魅力的に見せることができます。
モックアップは検索するとテンプレート(psdデータ)が無料で配られているので、それらを使うのが早いです。
プレゼンテーションの仕方によって、クラウドソーシングなどのコンペでも選ばれやすくなります。
修正
デザイン制作したものを提出したあとは、クライアントから修正が戻ってきます。
ヒアリングをしっかりしておくと、ここでの修正は多くならないです。ラフ案を送って、認識を都度合わせておくことが大事です。
ただ修正は必ずといって起こります。修正がしやすいようなデータにしておきましょう。
詳しくはこちらの記事内のワンポイントアドバイスで解説しています。
納品
提出したデザインに対して、クライアントの合意が取れたら、納品作業をします。
ロゴ | カラー・モノクロバージョン(JPEG・PNG)を納品する 場合によってはaiデータを納品することもある |
DTPデザイン | デザイナー側で印刷手配する場合はネット印刷会社にデータ入稿、クライアント側で印刷手配をする場合はPDF納品する(PDFだとデータトラブルが少ない) |
バナー | JPEG画像を納品する |
請求書作成
請求書も見積書同様、ネットにテンプレートがありますが、misocaを使うと簡単に見積書の内容から請求書を発行できます。
デザイン業界では、納品後に請求書を発行する「後払い」が基本となっています。
クライアントによっては月末締め翌月払いなど決まっているので、よく確認しておきましょう。
印刷物の場合はクライアント側に配送されて初めて納品になります。
仕上がりに問題ないか確認後、請求書を送るようにしましょう。
不満がある場合は刷り直しになり、追加費用がかかります。
配送の仕方で折れ曲がっていた場合は印刷会社が刷り直しの費用を負担してくれる場合もあるので、問い合わせてみましょう。
完了・その後
これでグラフィックデザイナーの1案件の仕事の流れは完了です。クライアントが個人の場合と制作会社や代理店の場合とで少しフローが変わりますが、おおまかな流れはこんな感じです。
コロナ禍になり、よりオンラインで完結できるよう工夫は必要ですが、自宅にいながらお仕事ができるので、ぜひ仕事の流れを把握してグラフィックデザイナーを始めてみてください。
確認事項に漏れがないように、制作物別にヒアリングシートを作っておくと便利ですよ。今はオンラインでやりとりすることも多いので、オンラインツール(Googleスプレッドシート等)を使うと効率よくヒアリングすることができます!